43歳になりました、まっさんです。きっと大迫選手もひとつ歳をとったんでしょう。そんなめでたい日に目を疑うようなとんでもないニュースが飛び込んできました。出し切るトレランレースと温存する登山。どちらも経験することが事故を減らすことだとは思うけれど。
(2019年のUTMFで富士浅間神社を通過するリャン・ジン選手。ご冥福をお祈りします。Photo by DogsorCaravan)
21人死亡の悲劇
dogsorcaravan.com
中国のトレランレースで178人の参加者のうち21人が死亡するという事故がおきた。
・どうせ中国クオリティのレースだろ
・たいして経験のない奴らが事故ったのか
・薄着で走ったんだろ
・日本なら大丈夫
・装備がちゃんとしてれば生き残れた
・エマージェンシーシートはどうした
そんな意見がTLに流れていたけどそんなことをつぶやくような人間は同じような状況で死ぬ人間だろう。
山を走ったり歩いたことのない人間が
・危ないことして死んだ
・認識が甘い
などと言ってるのは仕方ない、相容れない部分だから。
ただ、ランナーの私たち、中には山を走る人もいるだろう。そのもの達が取るべき行動は死者の二の轍を踏まぬようにその冥福を祈り、何が起こったかをしっかりと知るべきだ。
では、実際には事故はなぜ起きて、
どうすれば人が死ななかったのか?
「黄河石林山地马拉松百公里越野赛」とは
コースプロフィール
100kmのトレイルレースのようだ。
累積3000mというとほぼおんたけ100kmと同じようなコースプロフィール。
決して険しすぎる山岳地帯を登ったり降ったりするレースではなさそうだ。
(UTMFで168kmD+8000m、ハセツネで66kmD+3500mくらい。)
当日の様子
「熱中症に注意」とのアナウンスがあり、最高気温20℃最低気温9℃の予想だったようだ。
このアナウンスを聞いたらほとんどの人が薄着で行くのではないだろうか?
亡くなったリャンジン選手が2位に入った2019年UTMF。途中から降雪となり大会は途中で中止。大会側の判断がなければ装備の薄い日本人達が杓子山に突っ込んで悲劇は起きたんではないだろうか?
2019UTMF。
2週間前に20cmの降雪があったのに雪用の装備を持っていた人は何人いたのか?
まぁ、さすがのまっさんは持っていたけどな。
選手の心理とは?
分水嶺トレイルで死にかけたこと
偉そうに話しても自分は2年前に遭難事故に近い出来事を起こしてしまった。
www.breaking3.tokyo
長いから読まなくても良いけど、準備も計画もしっかりして試走もたくさんした。体力も十分にあった。でも事故が起きるところだった。
正常性バイアス
ja.wikipedia.org
きっとみんな走ってるから大丈夫。
前の人もいるから。後ろを見たらみんないるから。
当日は178人出場し21人死亡157人が救助。
まさか目に見える全ての人が遭難してるなんて思うランナーがいるか?
積み重ねた結果を出したい
アドレナリンも出るだろうし、コロナの影響で久しぶりのレースだろうし。
少し降られたって走り続けるのがトレイルランってイメージはある。
ロードランナーならそうそうに止めるような天候や路面状況でも走る競技、ってイメージはあるのでは?
少しくらい雨が降っても寒くても走ることで熱産生して乗り切っちゃおう、なんて認識の甘い人周りにたくさんいるわ。
装備が軽装すぎる
とのたまう人たち。
トレイルランナーと名乗る人たちはたしかにレインの上は着ても下を履くのが遅れて体温を保ててない気がする。下も履こうよ早めに。
走りにくいなら良いウエア買おうよ、走れるのあるから。
とも思う。
けど、、、
動画キャプチャだけど軽装だろうか?
ちゃんとロングを着てるし9℃の気温なら耐えられる格好ではないか?
ただ、9℃でも濡れた身体で稜線で風速10mに吹かれたら体感はマイナスだ。
それを知ってる、知ってるだけではなく体感したことがあるランナーがどれだけいたか?
セルフレスキューの知識
突然クイズ。
雨風強くなり避難もできない。そんな中、
「止まってしまったらどうするか」
あなたはエマージェンシーシートをもっていて雨を凌げる木陰もある。
1 全ての服を着てエマージェンシーシートにくるまる。
2 全ての服を脱いでエマージェンシーシートにくるまる。
3 全ての服を着替えてエマージェンシーシートにくるまる。
生存確率が高いのは
当たり前だけど「3」だ。
ただ着替えを持ってないランナーがほとんどだから1か2を選択しなくてはならない。
1と答えた人→死ぬ人
2と答えた人→生き残る確率がある人
みんな、たいてい1と答えるだろ。
だから死ぬんだ。
身体の熱を奪うのは冷えだから
全部濡れたものは脱ぐべき。
そして乾いたものだけを身につけ、乾いたものがないなら裸にエマージェンシーシートで暖かい空気を閉じ込めておければ少しは生き残る確率はある。
その判断を極限状態でできるだろうか?
多分スペシャリストでも無理だ。
自分は分水嶺の時に汗が乾くまでじっと動かず、体温が上がる可能性のあることを全て試した。
その後、記憶がほとんどない中90リットルの厚手ビニールを頭からかぶってゆっくり移動して生還した。
着替えは持っていたのでちゃんと脱衣して着替えていたら結果は違っただろう。
出し切るレース温存する山岳縦走
やまちゃんのツイート見て追記。
トレランレースでは出し切ってオールアウトしても最高のタイムを出せばそれでよし。
ジャストエンプティー。
一方で山岳縦走ではいかに体力を温存しつつ進めるか。ノットエンプティー。
アプローチは違うけど自分のキャパシティを知るということでは同じ意味な訳で。
両方とも突き詰めてる人間はやっぱり強いんだよなぁ。
悲劇を起こさないために
自分がこのような状況に陥ったらどのような行動を取るか、最善の行動は何か?
何かあったらペアで動いていても相手のことは助けることは出来ないんだ。
70kgの人が70kgの意識ない人を背負って山を下りるなんて絶対に無理。
人は死んだ瞬間いきなり重くなる。
意識がなくなった人も同じことが起きる。
生へのしがみつきがなくなると人はあっという間に魂が抜けてただの物体になる。そんな感じ。
どんなにトレーニングされた人間でも自分と同じ重さを背負って登り降りするのは絶対に無理だ。
何かあったらどうするか、リスクを背負える人と一緒に歩くのか、などなど。
それを真摯に考える人が次に同じ過ちを起こさない。
21名の方のご冥福を祈るとともに、誕生日に起きた教訓として自分でも気をつけて、自然と謙虚に向き合いたい。
コメント
事故に対するTWの書き込みは目を覆いたくなるようなものが多かったよね。。。
それを於いても、本格トレイルに対する自分の認識が甘々だということを実感できるためになる内容でした。あざす。
もう一つの悲劇が他人事じゃなさ過ぎて最後に全部持ってったけどなw
もちろん亡くなった方のご冥福と再び同じような悲劇が起こらないことはお祈りします。
のちさんも最近トレイル走ってますね!
トレイル!と言っても不整地を走ってそれを練習にするのは気軽にやって良いことだと思いますけど、何だか妙な自信をつけて走ったこともない山域に突っ込むとかそれはそれは恐ろしい事です。
このようなことがあった時に心ないことを言う人、謙虚にそこに向き合う人、いつか自分の身を守るスキルに大きな差が出ると感じます。
私はいつまで経っても家で自分の身を守れませんw
まっさん、参考になる素晴らしい記事でした。私も低山トレイルはちょいちょいやるので、もうちょい装備を持ってトレイルを走ることにします。あまり人の少ない来ない脇道入って→転けて骨折→急ない降雨と気温低下→携帯も圏外→あり得る状況、舐めたらあかんですね。
ミキティさん、低山トレイルは意外に事故が起こりやすいです、なんせ見通しも悪いから山だて出来ず方向感覚を見失いやすいかつ、人が通りにくい。
アプローチは良いので油断して軽装や地図なし、少ない食料で山に入ってしまう。ミキティさんのようにこうなったら危ない?!とか想像を巡らせることのできる人は強いと思います!!
普段走っているコースは携帯もつながるし、何かあれば5分で人里に出られるようなところなので、自分に言い聞かせる意味でも「ゆるトレイル」と呼んでいます。
そんなユルい環境ですら「疲労してから」とか「明け方の光量の少ない時間帯に」とか、一つ条件を加えてみるだけで別物になりますね。
高山とか夜通しとか想像もつかない世界っす。
とは言えやってみないとわからないことだらけなのも事実。
しっかり身体作れたら本格的なところに連れてって〜。
あ、初中級コースぐらいでお願いしますm(_ _)m